「コッペリア」顛末記本編その7
ACT.4_1 館の探索
さて、そろそろ時間じゃないでしょうか。ここは(現在その場にいるNPCフィオナとしては)帰って欲しいんですけども…。…と言ったらごね出す冒険者達。まあ、お約束か。
コール 「えー?でも、このままじゃフィオナさんも彼も可哀想な気が~…。」
いや、もうちょっと論理的に語ってよ。可哀想だけじゃ依頼の達成にならないよ?
クエール 「いや、もう悪い魔導師をどかーんって。その行いは許せね~って。」
脳みそが筋肉で出来てるのかあんたは(真実に近そうだが)。…というか、この2人のプレイヤーが「謎解きシナリオがいい」って主張してたはずなんだが。裏切り者めらが(DM私情丸出しですw)
アリーシア 「えーと、私的にはグリム神官様のかたきうちなんですけど、そういうのは言わない子なので黙ってます~。それにもう気持ちを伝える事もできないし。」
看病して恋が芽生えるルートはなくなったしな。
ハニー 「現実問題として、フィオナさんを村に連れ戻すには、彼女をこんなにした張本人を捕らえるとかしなきゃだめなのでは?」
フィオナ 「私の事はもういいんです。お帰り下さい。」
サム 「…しかし、黒幕がお父さんの魔導師だとしたら、我々は既に監視下かもしれんぞ?…彼氏がああ言ったとしても、素直に帰って無事なのかどうかはわからん。」
シロフォン 「…もう虎穴に入っちゃったしな~。…ガサ入れ?」
…こらこら、設定を刑事物にしないようにw
そこで作戦の方向性。取り敢えず、『グリム神官がいないから家捜しさせてもらう』って線で屋敷内をちょいと見せてもらって(DM註:えーとそれは無理矢理見るんですね?w)、できれば悪い魔導師を見つけて釈明してもらおう、ということに。
…多分、フィオナを連れ帰る依頼から、フィオナがこっちの館に嫁に来る事になったという事にして、村長への仲介をしよう(できれば持参金を運んで村長に納得してもらおうとか、その上で中間マージンをもらっちゃおう)という依頼に切り替える、という気があるんじゃないのかと言う気はDM的にするけど。…まあ、娘が連れ帰れない身体になっている以上、依頼達成の落としどころとしては妥当かと思われます。
…読みが正しければね。ふふふ。
フィオナ 「こ…困ります。約束の通り出て行っていただかないと…。」
ハニー 「でも、あなたをこのままにしておくのも良くないじゃない。」
クエール 「まあ、通りすがりの冒険者が暴れたって事で。」
…つうか、NPCを説得するとかゆー気はないのね?いいよ、それなら反応悪目にシフトさせるから(結末の伏線です)。
出ていって欲しい、と言うフィオナを無視して、館内の他の部屋を見て回る。フィオナには攻撃するだけの能力を付与してないので、彼女は困ったような風情でついてくるのみ。
フィオナ 「困ります…あの人を怒らせてしまったら…。」
ディクター 「そう言えば、息子さんも魔導師でしたね。」
クエール 「ゴーレムをけしかけられたらちょっとやばそうだけどな。」
サム 「フィオナさんや、あんたは離れとったほうがええかもしれんぞ?巻き添えを食うかもしれんからな。」
そんなことゆうたかて、招き入れた責任もあるし、ついて回りますよ。
さて、屋敷の中の様子。住人の部屋らしい部屋、客人を泊めるらしいちょっと豪華な調度品のお部屋、食堂、ゴーレムのいる部屋などは予想通り。その他、血の付いた寝台のある部屋(手術室?)…ここで何が起こったのかあんまり想像したくない…更にその奥には血だらけの書斎…。
アリーシア 「な、なんかすごいことになってる~?」
ハニー 「ここでも何か実験したってことですか?」
サム 「いやあ、他に実験室があるなら、書斎を血だらけにすることはないだろう。」
ディクター 「本は高価ですしね。」
シロフォン 「覚え書きとか日記とか研究の記録とかないか?」
探してみると、机の上にそれらしき書物が。ざっと読んでみたところ、館の主である魔導師の研究記録だった。記録から得られた情報は以下。
・研究分野はゴーレムとかからくり人形とか。
・やっぱりどこぞのお貴族様がパトロンについているらしい。
・できあがった一般的なゴーレムは守衛として活用されるほか、小型化して動物の皮をかぶせた剥製ペットのようなものも作出されている。
・人間にも技術的には応用も可能だが…
サム 「研究内容からして、彼らが作品であることは間違いないな。」
アリーシア 「でも、『可能だが』って、あんまり乗り気じゃないような記述なんだけど。」
読み進む。記述された最後のページは血にまみれていたが、かろうじていくつかの事情がかいま見える。
・昨日の実験中の不手際で、息子が…
・…の技術を人体に応用した事はなかったが、理論的には可能なはず…
・…作業は無事終わり、あとは起動のための…
ディクター 「…我々が予想した状況とは、だいぶ動機の面で違ってきますね…。」
コール 「えーと、つまり息子さんを救う為ってことですか?」
クエール 「…んじゃあ、しょうがないのかなあ。…で、フィオナは何であんなんなったわけ?」
アリーシア 「…えーと、どうしてかなあ。あっ、お、溺れたからとか?」
サム 「それよりも、記録のとぎれ方からすると、この血痕は息子の措置が終わってすぐ後、ということにならんか?…そして、フィオナさんのあの身体と同じ構造だとすると、血を流す事が出来た者は…」
ずずん。意見をまとめさせてあ~げ~な~い~。あーでもないこーでもないと一同が相談しきりの真っ最中、屋敷には奇妙な振動が走る。
クエール 「じ、地震か?」
コール 「ゴーレム達がやってきたのかも?」
ハニー 「フィオナさん、彼はどこに!?」
とりあえず彼氏を誘って外に避難しようと試みる。フィオナが案内した部屋には、魔導師の息子は見あたらず、何故か室内に腕やら脚やらが散乱しているのみ。
アリーシア 「えええええ~何で~?」
ディクター 「ひとり分の手足ですか?」
シロフォン 「頭と胴体はどこだ?…ってか、もしかしてその辺に抜け穴とかない?」
ビンゴ。あるよ。壁に隠されたシュートがあるけど、人間では狭くて抜けられない。ハーフリングが装備を外せば何とか。そして転がっているのは左右の腕と脚一組分。
クエール 「しまった、ハーフリングがいない~。」
サム 「ワシなら行けそうな気もするが…。」
残念ながら、他のメンバーに止められるサム。…まあ、シュートの下は地下だろうから、鷲の特性はまったく生かせそうもないしねえ。
ハニー 「仕方がないです。建物が崩れるといけないので外へ出ましょう!」
一行は、フィオナを連れて外へと飛び出した。。
ACT.4_2 秘められた恋の結末…というか。
屋敷の外へと転がり出る。…と、地震ではなく、揺れているのは屋敷自体のようだ。…と、地下室から屋敷を壊しながら出現したものがある。
…からくり巨大ロボであるw
クエール 「…目が点…」
コール 「ど、どかーんとやるしかないっってことですか…?」
アリーシア 「いや~ん、大きい~。」
ハニー 「…これもゴーレムなのっ!?」
えーと、基本はゴーレムですけどガルガンチュア扱いにしてあります。
ディクター 「操ってるのは彼でしょうか?周囲にはいないようですが…。」
ずしんずしん歩きながらせまってくる巨大ゴーレム(やっぱりファンタジー風に表現しておこうっと)。その作動音に混じって、くぐもった声が聞こえてくる。
ゴーレム 「…僕からフィオナを奪う奴は許さない…」
シロフォン 「…げー!手足切り捨ててビルトインしたのかっ!」
当たりです。手足を外せば狭いシュートも楽々移動。はしゃぐDMと裏腹に、巨大ゴーレムには一応愛に苦しむシリアスな台詞を吐かせておこうか。
ゴーレム 「こんな身体になってしまった僕には…フィオナしか…彼女がいてくれたらそれで…」
ハニー 「…だいぶんイっちゃってるっぽいわね…。」
アリーシア 「え~ん、純愛なのに美しくないのは何故~。」
それは土壇場でロボだから。イッツ折り込み済み!w
コール 「き、来ますっ!クエールさん構えてっ!」
クエール 「お、おう。」
サム 「戦いながら、崖の方へ誘導するんじゃ!我々の攻撃よりも、落下させた方がダメージが大きい!」
…周囲を飛び回るサムの指示を聞きながら、ゴーレムを打ち倒す。幸い、出てくるまでにブレスは発動済み。剣で、弓で、メイスで攻撃を加えながらゴーレムを崖際に誘導する。…最後はアリーシアのマジックミサイルを受け、ゴーレムは崖から下へと転落していった…。
アリーシア 「…あ~…よかった、何とかできて。」
ハニー 「…っ…待って!?」
戦闘直後、緊張がとぎれた一瞬。彼らの間をすり抜けて、フィオナが崖から身を躍らせる。あわてて追った者たちがのぞき込む。遙か下方、落下の衝撃でばらばらになったゴーレムの傍らに、ドレスを着たフィオナだったモノが、手向けられた花のように寄り添って倒れていた…。
ACT.5 エピローグ
クエール 「…さて、どうする?これから。」
ハニー 「どうするって…まさか村に帰って本当の事はいえないでしょ?」
ディクター 「…神殿には真実を報告すべきでしょうけどね、グリム神官のこともあるし。」
アリーシア 「フィオナさんは見つからなかったって…グリムさんとどこかに行ったのかも知れないって…言うしかないかも…。たとえ崖の下の2人が見つかっても…魔導師の作った人形にしか見えないと思うから…。」
シロフォン 「…魔導師の屋敷も『地震』で崩れちゃって誰も生き残ってないしな。いいんじゃないの、それで。」
ハニー 「稼ぎがなくって残念ね、コール。」
コール 「…まあ、仕方ないです。」
クエール 「お前、けっこうやるじゃないか。町へ出たら、うまい話でも探せばまた稼げるって。」
サム 「…鷲は金がなくても気にならん、というのがいいところじゃのう。」
口々に言いながら、戻っていく冒険者達。語られない方がいい真実もある…そうは思いつつも、彼らの胸の中にはまだ苦いものが残っていた。
魔導師の親子と、美しい村の娘…彼らの間に何があったのか。語る者はすでにどこにも存在しない。
全てを見ていた空も森も、口を閉ざすのみである。