「幻影の館」顛末記本編その5
ACT.7 勘弁してよご主人様
地下には何も見当たらなかった。…降りてきたものとは別の階段で再び1階へ。…先ほどの執事はどこだ?子供たちは?1階をうろうろしていると、執事が再び現れる。「ご主人様にお会いになられないのですか…?」もう一度主人の居場所を尋ねると、やはり階下にいるという。…あれ…?
結局、俺たちは白骨の横たわる牢獄(とその他ささいな出来事…あああ思い出したくないっ!)に気を取られて、隠し扉の存在に気がつかなかったということのようだ。地下牢の壁には、よく見ると奥のエリアに続く扉が存在していた。
緊張しつつ、隠し扉の向こう側へと進む。石造りの地下室…研究室なのか…?そこに座したローブの男はこちらをみると薄く笑って言った。「…よく来たニャ。」ぼとり。俺の手から松明が落ちる。…つまり一連の怪しい出来事はこいつの仕掛けで、しかもこっちの動きを観察して笑ってたってことか!…だがもう怒る気力も残ってねえや。あーあ。
ローブの男はゴンズと名乗った。ゴンズ…100年以上前から伝説になっている魔法使いだ。俺もいくつか活躍のエピソードを知っている。強大な魔力と卓抜したアイデアでいろいろな魔道機を作り上げた発明家だったはずだ。…あ~、そんなすごい人なんですが…驚く気力が残ってません。驚く役はどうもソーサラーとしての先達として知っていたらしいフランに譲って、後ろで黙って聞いている事にする。残りの2人が時々こちらに気遣わしげな視線を投げてきている…が、大丈夫!大丈夫だからこっち見るな!
「…実は、先日作った魔道機の実験でな。」魔法使いゴンズが話したところによると、もともとこの館は彼の所有するもののひとつで、しばらく…といっても数十年のスパンらしいが…留守にして戻ってきた後、秘密の地下室にこもって実験をしていたのだという。マジックアイテムというのは、宝珠…館を中心に結界を張り、その中にいる者たちに、自在に幻覚世界を見せる効果があるものなんだそうな。幻覚にも特徴があって、結界内に存在するものたちの意識無意識の中に存在する要素を具現化して見せる…ああ、なるほど、最初にゾンビが襲ってきたのは、事前情報で「アンデッドだったりして」という予想をした者がいたためか。
…待てよ?すると俺をおたんこなすにした例の呪いはつまり、「シュワルツ君のおたんこなす!」とか思った奴がいたため、ということになるのか…(仮想敵がかなり限定された口調ですが、あれはプレイヤー妄想をもとにしたため、メディーヌは無実です)?…なんとはた迷惑な…。
「で、村の子供たちよりも、もう少し骨のある者たち相手に試してみたかったので、お前さんたちは丁度いい実験材料だったわけじゃよ。」魔法使いが説明をそう締めくくって、実験に協力したという名目で魔晶石を譲ってくれたが、とりあえずフランに託す。そりゃあ面白い実験だっただろうよ!…そんなものいらないから森に入ってからのなんとも恥ずかしい記憶を抹消してくれ!…口が裂けても言わないけどな!