20070630幻影の館(5) of 床下通信オンライン

ジャンクっぽいモノモノ置き場的なナニカ。大丈夫なのか。続くのか。

「幻影の館」顛末記本編その3

ACT.4  招かれた者たち、招かれざる者たち

 奥の廊下、扉の前に立つ。「この先が食堂だよ。ここでおやつを食べようね~。」と能天気な声に、マジかよ…とため息をつく。ゾンビ戦がついさっきだぞ?俺は食欲ない。勘弁してくれよ…。
 一応扉の前で聞き耳を立てる。中からは何者かが歩く音…どうやら2本足のものらしい…が聞こえる。敵かと思い、身構えてドアを開けたが、そこにいるのは執事らしき上品な着衣の初老の男と、何故か大勢の子供たち。…メディーヌの顔見知りがいないということは、近くの村の子供たちではないということだろう。…と…いうか…「子供」のふりをした何かじゃないのか…?

 剣をぬいていたエスリンは子供相手に困ったような顔をしている。…フランもメディーヌも特段動きがない。…子供と執事が少なくとも見た目どおりのモノじゃないことを確かめる手段は…あ、やべ、考え付いた。しかも精神的にがっつり消耗する方法を。…うわ嫌だ!やりたくねえ!誰か何かやれよ!
 逡巡5秒(って本来あっという間なんだけど、誰かが何かをしてくれるかと期待して待つには結構長い)、渋々リュートを抱えると、フランに耳打ちして部屋の中へと入っていく。
 「こんにちは!ボクたち!」いつもよりも声のトーンを高くして、努めてにこやかに子供たちに話しかける。同時に自分の背中にざわっと鳥肌が立つ。さらに、鳥肌の上に「キャラ違う!」「誰よアレ!」という視線が刺さるのを感じる。畜生お前ら!野次飛ばしたら帰るからな!
 思わずついてきたメディーヌのおやつを子供たちに分け与えて油断させ(食欲ないから一石二鳥だ)、一曲プレゼント…といいながら呪歌「ララバイ」を演奏する。…うわあ。予想通りとはいえ、誰一人として寝やしねえ。ほんの子供に抵抗できるわけはないんだ。…コレはコレで腹が立つ!

 「素晴らしい曲ですな…。」執事と子供たちがぱちぱちと拍手をして、俺たちはテーブルにつくよう促される。…しかし、今の一曲で1年分の笑顔を使い切った気がする。…しばらく笑わない!てか帰ってひきこもりたい!
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ACT.5  階下への誘い

 テーブルにつき、料理を饗される(が、ここは食べない方向で)。エスリンはハーブに口をつけていたが…大丈夫なんだろうか。3人がなごやかに談笑するのを俺は聞いている事にする。…というか、さっきの演奏で心身ともに疲れ果てた…もう帰っていいですか?

 子供たちのある種お素敵なテーブルマナーをぼんやり眺めるふりをしながら聞いた話によれば、なんでも館の主人が子供たちをここに招いたのだとか。フランが「ご主人に挨拶をしたい」という方向に話を持って行き、執事は「それでは伝えて参ります」と言うと子供たちを連れて出て行ってしまった。…何故かその瞬間にまたぞろ扉の鍵が勝手に閉まったり、室内の蝋燭がいっせいに消えたりと怪奇現象が起こったが、あわてても仕方がないってんで予備の松明に火をつけつつ待機。

 ひとりで戻ってきた執事によれば、「ご主人様は今手が離せないそうなので、地下までおいでください」とのこと。「あれ?地下は入っちゃいけないことになっていたはず…。」メディーヌの呟きが聞こえる。つまり今まで封印されていた地下が開放されていると。…んでもって、地下で待ち受けている、と。…やだなあ。そろそろ俺的にはオーバーワークです。ヘタレと言うなら言え。ない袖は振れない、ない根性は奮えないのだ。

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